馬場 勉コラム
『自今生涯』

第31回

ただ今 充電中!

けっこう夢中になって、人生を真面目に走ってきた。放電し続けたように思う。ここらで一服しながら我が人生を充電したいと思った。会議や会合などは、必要最小限のものに限って出席するようにしている。特に、必要性を感じないものは欠席しているが、別段、不自由も感じないから気持ちを変えれば気軽になるものだ。考え方、見方を左右することにより生き方が転換できるものだと思う。

とはいえ、何もせずに、暇を持て余すのも良くない。そこで、時々はそれなりに行動を起こしているが、もう少しすれば、再起して活動をしようと考えている。人生は複眼的に考えたい。

ということで、グダグダしているところだが、先日、観光バスで一泊どまりの旅に出た。

出発の朝は、激しい雨と雷に見舞われた。とにかく、岡山を出発した。全行程2日間で約1,500Kmは走破していることになるだろう。

東海北陸自動車道という名前すら知らなかった高速道により世界遺産の白川郷へ。前行った時は雪の降る中を散策したが、今回は雨があがった秋の風情の漂う合掌造りの白川郷を見て歩いた。泊まりは、飛騨高山へ。夏服で行ったが、寒かったので上着を現地調達した。ホテル内は土産物屋をはじめ、何でも間に合うようになっていた。温泉の泉質はビックリする程ではなかった。

翌日は、小京都の飛騨高山の街並みを歩いてみたかった。が、オプションで、上高地の河童橋へ行った。ガスで槍が岳などの雄大な飛騨山脈の姿は見えず残念。けっこう多くの人がいた。登山者が目立つ。かなり冷え込んで寒かった。やはり、相当に標高が高い所なのだ。

岡山へ帰る途中に、水の都の郡上八幡(ぐじょうはちまん)に立寄る。ガイドの人の話を聞く。盆踊り(33日間毎晩踊りを行う)で有名。かつ、水の都にふさわしく、水はまろやかでおいしかった。岡山市には無い雰囲気に満足した。

はじめての所もあり、楽しかった。心の洗濯ができた。長いバス旅行だが、三木サービスエリアでトイレ休憩。三木まで帰ればホッとする気分になる。不思議と、早く岡山に帰りたくなってくるものだ。

先日、新聞で新本の広告文を見た。女性を書かせると右に出る作家はいないと評価されている作家・渡辺淳一氏の孤舟(こしゅう)という長編小説の説明だった。その広告文には「なんと、男とは孤独な生きものであることか」「仕事一筋だった人生から一転、定年退職したとたん、全てがギクシャクしだした。今まで知らなかった妻の日常、かわいかった娘も独立し…」「寄る辺なくさまよう威一郎は一人の女性と出会い…。肩書きや地位を失った時、男に求められるものとは?」という謳い文句を見て、読むことにした。

渡辺作品はさほど難しい文言はなく読み易い。誰でも読める文体だが、内容は深く興味をそそる直木賞等を受賞している作家の最高峰の傑作。文章はさすがに上手いと思う。身近な所では、週刊誌「週刊新潮」の連載コラム「あとの祭り」を書いている。私は、毎週楽しみに読むようにしている。為になる。

さて、本屋で「孤舟」という本を見つけて、只今読んでいる。かなりの分量の本だから、初めから終わりまで根をつめて読むと疲れる。適当に好きな所を拾い読みしてみる事も出来る構成だから気は楽だ。定年後の男の悲哀を、面白おかしくかつ真面目に綴っているから、結構楽しく読む事が出来る。似たり寄ったりの気分の男はこの世には多いだろうから、身につまされ小説の世界に引き込まれるだろう。

気になった言葉は、定年後の主人公に「もう世間に必要とされていない。そして語り合える友人もいない。その孤独感が病気を誘い出すのです。」「悶々として楽しめない。その憂鬱な精神状態が、血の巡りを悪くして病気を生み出すのです」と言わしめている。

なるほど、そういうものだろう。幸いにして、生涯現役を貫くと宣言している私だから時には充電も良い。が、憂鬱な状態にならないようにしなければならない。ボツボツ充電期を脱出して、再度人生を楽しく充実した人生航路にしなければと奮起したいものだ。と、思い直した今日この頃です。

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