馬場 勉コラム
『自今生涯』

第24回

夏到来。蝉時雨で始まる毎朝。

前回から、すでに10日程経った。日時の経過が早い。このような状況ならば、一年が経つのもあっという間になるだろう。

梅雨末期の集中豪雨が一段落したら、とたんに梅雨明け(7月17日)になった。

自然界の季節感は敏感だ。だれが教えるわけでもないのに朝早くから蝉が激しく鳴き始めた。蝉の恋の季節である。岡山市の街の中心部に住んでいるのだが、川(農業用水)が流れていて、草木が植わっているので、蝉が成育する自然環境が保たれているのだ。これから、当分の間は、蝉時雨に悩まされる日々が続くが、蝉のためにはガマンしよう。それが、生きとし生けるものへの愛情であろう。

さて、県外出張していたためそれなりに時が過ぎたのだが、先だって雨の降る中、木下大サーカスを見に行った。大変に混んでいた。非日常的な世界に一時間半楽しませてくれた。日本人のみならず外人も構成員。人間の技が極限に挑む。動物(ライオン、トラ、ゾウ)が芸をする。5年程前の前回のときに見た記憶から思い起こせば、変わったものと変わらないものが組み合わせのように混合しているようにも思えた。新陳代謝しているのだ。

円球の中に三台のオートバイがグルグル回るのだが、衝突しない点は素晴らしい。美女が、ライオンに変わるイリュージョン・マジックは手品の極まったもので、種(ネタ)がどんなものか分からないところが良いのだろう。空中ブランコも万一の場合のための網を張っているのだが、失敗して落下する例は無かった。

木下大サーカスは岡山市を拠点(本社がある)に世界中で活躍している。明治35年創始以降、100年以上の伝統を誇る世界三大サーカスに数えられる名門の老舗なのだが、長い歴史の中で変わったものは、実演する人たちの経歴であろう。一昔前までは、サーカスの歌が物悲しいメロディーで暗い感じが漂っていた。真偽の程は定かでないが、演技前に体を柔らかくするため、酢を飲むといわれていたが・・・。

しかし、今の団員は、機械体操をした経験があるとか、高校でインターハイに出場したとか、全日本大学選手権(インカレ)に出場したというような天与の才能とハイレベルな基礎的技術を持っている人が多いのだ。だから、技は早く覚えるし仕事に対する意気込みが違う。演技に、若い青春を打ち込んでいる人が主流を占めているようだ。だから、構成員全員が一致団結して楽しく人生を謳歌している。それゆえ、見るものに感動を与えることができるのだろう。

何度でも、見に行きたいと思う。演技しているときの集中力と技の切れの美しさが際立っている。演技者は、男も女もみんな美しく逞しい。鍛えれば、人間でも動物でも、奥の深い未知の世界まで到達できるものだと感心しきりだ。

CONTACT
ご相談窓口
お気軽にお問い合わせください。