馬場 勉コラム
『自今生涯』

第174回

人それぞれ。人のふり見て我がふり直せ。

伝説の美女「原 節子」さんが 95 歳で亡くなっていたとのこと。どのような心境の変化があったかわからぬが、1962 年に突然引退して、世の中との関り合いを全て捨て、静かにひっそりと、公の場には一切登場せずに、 53 年余を過ごした。

年配の人で映画をよく観ていた人でないと、実像は知らないかもしれない。謎めいた神秘的なイメージを生んだ女優さんだった。世代の交代の時期だが、一世を風靡した人が段々亡くなってしまったが、いまだ現役を貫いている人も現にいる。人それぞれの人生観が、なせる技でしょうか?

それにしても、最近のテレビなどに出演している人達はよく知らない人が多く、芸人というより風変りないでたちが目立つ人が、大半を占めている世の中である。

年の瀬も迫り、 12 月になる。先日、突然、我が家の前にあるミニスーパーマーケットが閉店した。朝になっても電気がつかず、変だな~と思っていたら、債務超過で営業を停止した。ビックリした。他の業者が後を引き継ぐということで、一安心したが、それにしても残念だ。開店したときから知っていた。社長は一生懸命働いていたのだが、薄利多売の時代では、持ちこたえられなくなったようだ。

事業拡大と消費増税など、多くの要素が絡み合ったためだろう。頑張っていたのに、残念でならない。同じように努力しても、成功して風を切ってあちらこちらに顔を出している今成り金もいる。運と生き方の差なのかもしれない。いくら成功者の書物を読んでも、自分が成功するとは限らない。時代の流れと個人の運などが左右するのだろう。

松下幸之助(現在のパナソニックの創業者)や稲森和夫(京セラの創業者)の成功の秘話本が、長年のベストセラーで売れているが、いくら松下幸之助の「指導者の条件」などや、稲森和夫の「成功の要諦」などの本を読み耽っても、成功するとは限らない。所詮は、人生そのものが確率の問題かもしれないからだ。社長の器になれる性格、かつ、従業員をバッサリ切れる人はよいが、しかし、優しい気持の持ち主で、従業員を切れないでズルズルとする人などの気持の違いの問題があるかも知れない。

それにしても、一所懸命、仕事をしても自己破産しなければならない人もいる。反面、成功して世の中を蔑視して、偉い人のようにふるまう人も現にいる。

どうも納得がいかない不平等な世の中でもある。それが人生というものかと思うが、他人のふり見て我がふりを直すことも必要だろう。

ただ。人様から陰口を言われないようには、したいものである。口では言わなくても、色々、他人様からあまりよく思われないのは情けないから…。

話は変わるが、一口に高野山の奥の院の参道といっても、 20 万基に及ぶ墓地があり、戦国大名の五輪塔は苔むしている。無縁仏になり、引き墓となって、整地されている所もあり、今成りの人の大きな墓もある。その中にあって、松下幸之助(現在のパナソニックだが、松下電器産業の名の入った墓石がある)の墓には、常に生花が飾られている。生花がある墓は、 20 万基の中でも珍しい。墓守に頼んで、いつも生花を飾って、いつ誰がお参りしても良いように、先祖代々を守ってもらっているのだろう。そういう気持が大切であると考える。

奥の院で般若心経を唱えると、ようやくここまでこれたと、感謝の気持ちが湧く。生身の人間の偽らざる心情である。目頭が熱くなる。まず、元気であればこそ、高野山の奥の院までかなりの距離を歩いて辿り着けて、お参りできたのだから。

何れにせよ、年末年始の多忙な時期を迎える。事故のないように、注意して寒さに負けない心と体作りに励みたいものだ。

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