馬場 勉コラム
『自今生涯』

第124回

サクラ咲く

毎年 3 月から 4 月にかけては、卒業・入学・退社・入社などの人生悲喜交々の節目のときである。東京では桜が満開を過ぎ 3 月中に終りをつげ葉桜へ異動するようだ。 10 日以上早い春の訪れだった。東京では、例年は四月の入学頃が桜の満開で気分も高揚し新しい生活が始まると実感したものだった。が、今年は早すぎて拍子抜けというところか。桜と梅が同時に咲いているところもあって、遠目にはどちらか区別が付かないところもある。

岡山は五分咲きというところか、まだこれからだ。京都では六角堂の桜が先駆けて咲き、遅咲きは仁和寺の桜でサクラの時期が最終を迎える。

岡山市内は、西川・枝川の緑道公園の桜は満開までまだ大丈夫だろう。日中は暖かくても夜になれば冷え込むから、夜桜の見物する為には防寒対策が必要というおかしな現象になる。ひとくちに桜の開花といっても、地域、品種などにより咲くときのズレがある。冬の寒さに耐えて暖かくなって木が目覚めて花を咲かせるから、冬が寒かったところ程綺麗に咲くということか?四季の変化が必要なのだ。

サクラの早咲き、遅咲きをみるにつけ、人生そのものを思う。早熟な人、おくての人など人間社会にも存在する。神童といわれても 20 歳過ぎればタダの人となることもあり、若い時にパットしなかった人でも年を重ねてゆくうちに燻し銀の輝く人生を切り開くこともめずらしくない。

同じ幹で条件が同じであっても、早く咲くものもあれば遅く咲くものもあるのが現実。子供を育てても早く親離れする者あれば手の掛かる遅い者もある。個別性があるのだ。

私は、桜の時期を迎えると決まっていつも思うのは、早咲き遅咲きがあり個性があるという現象が面白いことだ。人の人生も早い者もあれば遅い者もある。何れにせよ、桜の咲く時間差は数ヵ月の間の勝負であり、これからは若葉が美しくなり、そして秋には落葉してさらに冬の眠りに入る。春に目を覚まして花をまた咲かせるということの繰り返しである。時たま狂い咲きする場合もあるが、早咲き遅咲き何れが優れているかというと、どちらが良いかははっきりしない。大器晩成といわれるから大器になるには時間が掛かるということでもある。

「サクラサク」「サクラチル」で思い出されることがある。一昔前の大学の合格発表は大きな掲示板に受験番号(名前はどうだったか)が発表されていた。地方出身の者などは合格発表を見に行けなかった。その弱点をついた商売(学生アルバイト)があった。

発表日に本人の代わりに見て合格した場合は「サクラサク」不合格の場合は「サクラチル」というような暗号電報を打つことを請け負う仕事だった。私もお世話になった一人だが、最近はインターネットや携帯が浸透しているため電報を請け負う学生アルバイトも存在価値が無くなり影を消しているかもしれない。現実はどうなっているのか私には必要がなくなっているため分からないが…のどかな時代でもあった。

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