馬場 勉のコラム
『自今生涯』
「アベノミクス」て何ぞなもし
3 月 12 日の今夜は、「奈良東大寺二月堂お水取り」は14日まで行われるもののクライマックスで盛り上った。冬も終盤。 20 日は春分の日であるから、「暑さ寒さも彼岸まで」の諺通り、三寒四温を繰り返しながら、 3 月末頃には桜が咲き出します。
安倍内閣が発足してから新聞、テレビ、雑誌などで「アベノミクス」という話が出ない日はない。「アベノミクス」とは何ぞなもしと云いたい。
夏目漱石の坊ちゃんの小説の中で、宿の御婆さんが坊ちゃんに「山嵐て何ぞなもし」と方言で問うたところ、坊ちゃんが「山嵐と云ふのは堀田の事ですよ」と回答しているくだりがある。
そこで私は「アベノミクス」て何ぞなもし、と疑問を発したいのだが、注釈の付いた記事が見当たらない為、自分なりに調査したところ、「エコノミクス=economics」は経済学という意味だから、エコの変りにアベと置き換えて「アベノミクス」とした造語らしい。その意味する基本政策は、金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢から成り立っている。一本の矢だけでは腰砕けになるが、 3 本が一緒に並行して行動すれば矢は折れない。戦国時代の武将毛利元就の故事に例えられる。
安倍総理が総理大臣に就いてから、あれよあれよという間に株式は天井知らずの高騰を続けている。円安になってたんまり利益を手に入れた企業も多いが、反面、庶民は電気代やガソリン代の値上げに悲鳴をあげている。月給を上げて購買力を高めることにより、物価上昇率目標を 2 %のインフレターゲットを達成したいとのことだが、計算通りゆくかどうかは半信半疑だ。
デフレ脱却の究極の秘策となるか、あるいは、デフレから抜け出せず一瞬の熱狂に終わるか、やってみないと分からないが、鰻屋のうまそうな匂いが漂ってきて株式や高級品の購買に先走りする者も多いなか、肝心の鰻を食べることができない人も多く出てくるだろう。勝負は夏の参議院選挙が山場だろう。
「すべての道はローマに通ず」という諺があるように「すべての道は経済に通ず」。どんな立派な政治でも国民がデフレやインフレで苦しんで「アベノミクス」の経済政策が失敗と烙印を押されないよう成功することを祈るばかりだ。難問が山積している日本だが、なんとか良い方向に進んでほしい。
ただ、日本銀行が長期国債を買入れて金融市場にお金をじゃぶじゃぶにする大胆な資金供給をしても、金融機関がジャグチを開かない限り、金融市場への流通は掛け声だけで終わってしまい、優良な企業は多額の儲けを蓄えているから、お金を借りる必要がない。本当にお金の必要な企業等へは、焦げ付く心配があるので融資しにくいため、ミスマッチの現象が現れる。金融機関には、同情する余地はある。貸し剥がし、貸し渋りと非難されながらも、金融機関が生き延びないといけないから、融資するかどうかの判断は痛し痒しというところだ。
もし焦げ付きが発生しないのであれば、金融機関は儲かる商売だが、そういかないところに云うに云われぬ悩みが生じているのだ。とにかく、いい方向に進んでほしいと思っている。土地バブルの再燃が危惧されることだけは、本当らしいが…。