馬場 勉コラム
『自今生涯』

第108回

尖閣諸島3島の国有化実現

例年より雷の多い年のように思われるが、そうこうしている間に、秋の気配が感じられるようになった。一日一日気象は変化していて、四季の変化が感じられる。やはり、日本は四季があって住み易い良いところである。

昨今のニュースを賑わせているのが、沖縄・尖閣諸島(せんかくしょとう)問題。いろいろ経緯はあったが、日本国が所有者(賃貸人でもある)から 20 億 5 千万円で買収することになった。

不動産鑑定士である私にとって興味あることは、買収金額の算定の根拠がどのようになされたかである。尖閣諸島のうち買収対象は、魚釣島、北小島、南小島の 3 島で現在は無人島。かつては、数百人が生活していたとのこと。平地部分があるものの急峻な山があったりで、単に山林などの地目で評価する限り、たいした金額にはならないと思われるが、国境を守るためには重要な島であることに違いない。中国や台湾などの隣国との摩擦が現に生じている。日本国としては、海底資源、排他的経済水域など、単なる島そのものの土地の価値以外の経済的かつ国家的な価値があることは間違いない。これらの価値をどう付加価値として評価するのかが命題である。専門家からみれば難しい評価である。学者などの御高説を伺いたいものである。

政府は、隣国との無用な争いを惹起しないようにと、主権の問題でなく、海の安全面から国有化するのだと説明しているが、所詮は領土問題である。国土を守るのが国家の重要な責務と課題である。どこの国も領土問題については、俄然敏感になる。日本は、対応が甘いように感じられる。掛け声だけで真剣さが足りないと思われるからだ。

官僚に頭の良い人がいるものだ。 3 島の金額を決めるにあたっての理由付けに『再生費用法』という新しい手法を編み出した。不動産鑑定基準には出てこないような新しい理論構成である。ただ、経済学の用語ではあるものの、不動産鑑定では使用しない概念であると理解できる。

要するに、新しく3島を作り出すとした場合の費用を積算して、島の価値をお金に置き換えるという考えのようだ。ただしかし、積算の根拠が明白でない。沖縄本土からは随分離れたところにある尖閣諸島であるから土砂の運搬費が莫大にかかるし、どのくらいの海底から再生する(造る)ことを考えているのか等々という素朴な疑問が湧く。いくらが島の価値として妥当な価額であるか?高いとか安いとかは国政のレベルでは議論されていない。国策のため反論もない。

所詮は、諸々の国家的見地から判断した外部要因により3島の存在価値が認められているのだから、土地(山林や平地など)そのものの単純な価値だけでなく付加された目に見えない、あるいは、他の経済価値が生じることに着目すべき案件である。だから、当事者が納得した金額であれば、「それでよし」ということになるであろう。

学問的見地からは、興味ある事案であり価額付けについての検証かつ検討がなされなければならないだろうが、専門家の間でも水掛論に終わるのが落ちというところでしょう。諸要因をどのように評価し考察するかにかかってくるといえます。はっきりしていることは、妥当な価額は明確には分からないだろうということです。

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