馬場 勉コラム
『自今生涯』

第63回

出処進退のむずかしさ

最高権力者である内閣総理大臣は、日本国中でただ一人しかおらず人事権を持っているから、一度権力を手に入れると魅力があって離したくないものらしい。らしいというのは、私はなったことが無いからわからない為。

総理大臣が憲法上辞めるのは、衆議院の総選挙後に初めて国会が召集された時と、内閣不信任決議案が可決された時、または内閣信任決議案が否決された時だけの二つしかない。だから、自分みずから任意で辞める以外は、外部から圧力で辞めさせることは不可である。総理がやるという以上どうにもならないのが現実。

「一定のメド」がついたら辞任すると公言したのだが、一定のメドとは何時かがはっきりしない。野党は勿論与党でも取り巻きの人を含めて早めに辞めた方がよいという声が上がっている。新聞等では既定の事実として報道されている。

菅総理は針のむしろに座っている心境だろうが、ガンとして何時辞めると言わず、やり残したことがあるから納得のいく時までやる、という気持が強いようだ。

何人を問わず、出処進退を決断するのには勇気がいるし、大変な決断がいる。晩節を汚さないようにしたいものだがそれが難しい。

菅総理は、一年余総理の座に就職しているが、残念ながらやり上げたというものが少ないため、不完全燃焼の状況にあるようだ。だから、まだやりたいことがあると意気軒昂なのだと思う。ただ、完全燃焼できなかったのは誰のせいでもなく、自己責任だと思うのだが…。

辞めると公言した以上、役所や官僚はじめ取り巻きの側近の人ですら離れてゆく。求心力が無くなってゆく。辞める人の約束事など誰も信用しないし、実行性に乏しく、本気で菅総理についていく人は口先に反して本当のところ極わずかなのである。淋しいことですが仕方ない。

結論的には、早期に辞職してけじめを付けることが菅さんの為にもよいことだと思うのだが…。

最近の菅総理に、疲れの色がみえる。取り巻き連中には血色がよくふくよかで、菅さんに対するヤメロヤメヌはどこ吹く風とばかり、我関せず結構いい思いをしている人が多いように見えるのだが、気のせいとばかりは言えないようだ。

孤独な人、その名は菅直人総理大臣。同情を禁じえない立場になってしまった。早くメドを付けてほしいが、これからどうなるのかよくわからない。残念ながら…。

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