馬場 勉コラム
『自今生涯』

第60回

仁義なき戦い

暴力団の世界の話ではない。日本経済新聞に連載されている「私の履歴書」の話である。

現在、アサヒビールの元会長の瀬戸雄三さんが書いている記事は興味がわく。

アサヒビールに大学を出て入社し会長にまで上られた映え抜きのプロパーの人である。

私は、いろいろな意味で瀬戸さんの記事を楽しみに興味深く読んでいる。並み大抵の努力ではなく、死にもの狂いの大変な尽力をされてきたことが読み取れる。

特筆すべきは、ビール業界はシェア争いが熾烈なようである。アサヒ、キリン、サッポロ、サントリー等メーカーがある。それぞれの会社が業界のシェアを競いあっている。

当然のことながら、ビールの味であるクオリティ(品質)が何はさておき第一義的差別化の基本であるが、それに勝るとも劣らないのが営業力である。

営業活動がいかに大変で、城を守るために命がけでガンバッテいるかがわかる。

ライバルから顧客を奪うことに血眼になって、仁義なき戦いの奮闘かつ全力投入をしていることがわかる。他の業界でも似たり寄ったりの厳しさがあるはずである。取った取られたの熾烈な世界の物語である。

翻って、私の行動をみるに自由業(士業)で、顧客は公共団体からの仕事が多いため、口をあけて餌を与えてくれるのを待っている状況であった。さほどの努力をしていない。もっと死にもの狂いで、他の業者を跳ね除けてでも顧客を取るという意気込みがあれば、私の人生も社業も大いに変わっていたと思う。これからでは、すでに遅いような気もする。他人を排除してでも仕事をとるという気迫も、私は主観的にみて人のいい優しい気持の持ち主のため生れないように思う。お先にどうぞ、私は残り物を落穂拾いしますというような甘ちょろい気持では、成功はおぼつかなかったのだ。

だから、たいした人物にもなれなかったし大成もしなかった。反省している。ただ、これからも一生現役を貫きたいから、瀬戸アサヒビール元会長の活動、行動の秘話を参考に、心を入れ替えたいと思った次第である。

さて、現実的な話題を考えてみよう。東日本大地震で「得をした者と損をした者」が当然生じているということだ。戦争では、国民は被害者だが軍需産業は特需として利を得る。

今回の地震・津波による復旧・復興の一連の経済活動で製造業の一部では受注が増大し生産が追いつかない企業もある。特に西日本の製造業の中には特需で随分と潤っている部門もある。

被災をうけて、涙ながらの生活をしている者がいる反面、その裏で特需で稼げて笑いが止まらずほくそ笑む者もいる。この構図は災害が起これば常に生じている。特需で濡れ手で泡を掴む人は、しっかり義援金等を献金したらよいだろう。社会還元である。

また、利得相応の税金を納めていただくこと。そうすることにより、国民等しく被害を分担すべきである。いわゆる所得の再分配が、公平な立場から判断してもあるべき姿だと思われるからだ。

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