馬場 勉コラム
『自今生涯』

第52回

恐怖の津波による未曾有の壊滅的被害

「地震、かみなり、火事、おやじ」と怖いものの代表のトップが地震だ。確かに地震は怖いがもっと凄まじいのは、信じられない破壊力のある津波だった。岡山に生活している者にとって津波は観念的のもので、(高潮の経験はあるが)現実の怖さを知らない。ところがテレビの映像では、津波が防波堤を乗り越えて、船、家屋、クルマ、電車、田畑、などありとあらゆるものをのみ込んで猛烈なスピードの勢いで、全てのものを押し流していく様は地獄絵を見ているようで想像を絶する怖さだった。

人的・物的被害はさらに拡大するであろうし、壊滅的被害を被った町村では再起は不能で町自体を放棄せざるを得ない場合も生ずるであろう。

もともと、地域を形成している地勢が地震などによる地殻変動で出来上がったであろうリアス式の海岸で“松島”をはじめとする自然美が売り物でかつ良港が多くて漁業も盛んであったはずの港町が、津波で壊滅的被害で一瞬のうちに全てが無くなったのは、古代からの地震や津波の繰り返しという皮肉な自然災害そのものであった。

原発の炉心が溶融しさらに大規模な爆発と放射能漏れが起こっている。大変な人体に影響する大規模な放射能汚染の危機が広がっている。電力やその他の物質の不足が起こるなどライフラインはずたずたになりさらに雪が降る寒さに追い打ちされて、ただ茫然自失という感が強い。とにかく、東北地方の太平洋沿岸一帯は全体的にみれば人口密度は低くても守備範囲は広い。ただ、地勢の関係で平地に一局集中的に建物等が密集している点は見逃せない。工場や農産物・魚介類など影響は甚大である。

「経済」は混乱し停滞するであろう。株式が大暴落した。ただ長い目でみれば、復興に関わる関連企業にとっては“特需”になるから将来的には仕事が増大して経済的にも潤うようになるはずだが、相当先のことになるだろう。国民的立場からみれば国難でありショックも大きいが、段々と復興事業が盛んになりそれに伴って潤う企業群も多方面に出てくるという経済的効果を生む結果にもなるだろう。

ところで、今回の地震で最も得をした人は誰か?それは、菅総理大臣と内閣である。三月危機といわれ、いつ内閣が総辞職してもおかしくなく、政治献金などプライベートな問題が発覚していたのに、大規模地震の発生のため国民の生命・財産や原発など緊急の課題解決のため、与野党一致団結して国政に立ち向かう必要があり、与野党で政治的駆け引きの喧嘩をしているような情勢ではなくなった。関心が地震・津波・原発等に移り、実質的な休戦状態になっている。

菅総理は運の良い人である。今にもつぶれそうになっていた内閣が大事件で、内閣の倒閣あるいは総辞職等の問題や課題は吹っ飛んでしまった。当分の間、政局はお休みして歩み寄る必要がありそうだ。菅総理はパフォーマンスのお好きな方だが、大将はどんと構えて冷静かつ真剣に復興に対応してほしいものだ。イラカンよろしく東電に怒鳴り込んでいてはどこからも情報が入らなくなりますから。

また、全てのテレビ放送が地震一色の特別報道番組に塗り潰され、コマーシャルもないかつて経験ないような状況になったが、連日 24 時間地震報道を見ると地震以外の内容のものが見たくなったから人の気持は不思議なものです。遠く離れている岡山の私は、義援金を寄付するほかにどうしょうも支援する手段がない。ただ困ったことだと思うだけだ。残念ながら…。

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