馬場 勉コラム
『自今生涯』

第49回

岡山平野に春を呼ぶ「西大寺会陽(えよう)」

2月第三土曜日( 2 月 19 日)の夜 10 時に岡山市西大寺観音院の本堂大床で日本三大奇祭の「裸祭り」が勇壮に行われ、宝木(しんぎ)が投下された。

室町時代( 1510 年)から行われているため 502 回目になる。約 9,000 人の裸衆が参加した。ギャラリーを入れると三万人を超える人々が厳しい寒さの中で裸絵巻を裸の群と見物客とが一体となって繰り広げた。

私は、裸で参加したことはないが見に行ったことは何度もある。今年はケーブルテレビ(オニビジョン)の中継で見た。

裸の参加者に、外人が目立つようになった。本気で宝木を手に入れるためには、平素から体を鍛えトレーニングをして、取る練習を欠かさない。特定のグループが毎年手に入れている。今年は、阪田グループと林グループが見事争奪戦を制した。

一昔前は、個人が手に入れることもあった。時代は変わり、昨今はグループ化したプロ集団でなければ、取るのが無理になった。プロ集団以外のその他大勢は参加するだけの賑やかしということになるが、参加すること自体がすごいことである。外人さんや他県から岡山に来ている転勤属の人達が一生の思い出として参加する場合も珍しくなく、国際色豊かなお祭りになっている。

もみ合うと熱が発生して、皮膚が火傷するので、それを防ぐために打ち水をしている。また水が潤滑油になり体が滑らかに動き、するりと抜け出すことができるようになる。打ち水は一瞬にして湯気となり、寒気の中にたちのぼる水蒸気でぼんやり霞んだ状態になる。

私は、以前堂内に入る機会があった。 2 階に上がり、かなり広い間口の宝木を投下する御福窓(ごふくまど)から下を覗いたことがあった。大床は思ったより狭く上からは下がよく見える構造になっているのに驚いたことがある。

大床に数千人の裸の群れが入れるという現実を本当かと思ったが真実である。渦の中に入るとおしくらまんじゅうのような状態だから外圧で中に居ると妻先立ちになり浮き上がっているらしい。もまれて倒れている者が見つかれば直ぐに救助隊が群を割って入る。過去に死者が出たことがあってから、監視が厳しくなった。手を上げてもみ合っている。手を下げていたら周辺の圧迫力で沈み込んでしまうために手を上げているというのが本当らしい。また、宝木を掴むためでもあるが…。

毎年の行事である。ただ一度でも参加したら一生記念に残るし話の種になり英雄気取りにもなれる。寒い中、見物するために取り巻いているだけでも興奮するものだ。

岡山西大寺の裸祭りを後世に残していかなければならない。殊勝にも若い者が鍛練して参加の機会を楽しみにしている。だから、これからも永遠に続くことは間違いないだろう。

「会陽あとまつり」の植木市などが観音院境内と隣接する向州公園であり、これからは岡山に春が段々と近づいて来ることだけは間違いない。

春はもうそこまで来ている。そういう気持にさせる「はだか祭り」だ。だから、あと少しの辛抱です。

CONTACT
ご相談窓口
お気軽にお問い合わせください。