馬場 勉コラム
『自今生涯』

第36回

栄枯盛衰を連想

ひさしぶりにJRで倉敷駅へ。北口にある、「からくり時計」がちょうど時報の鐘を鳴らしていた。人形が約5分間おどりながら一回転した。初めての経験に、見とれながらうまく作っているものだと感動したまでは良かったが、チボリ公園のあった場所は、建物をはじめすべて無く、雑草と木々がはびこる広々とした、ただの空地になっていた。ここに 10 年余チボリ公園がにぎわい、人を集めていたのだが、現在は、ただの空間でしかない。ああ~何ということかと言葉を失った。

チボリは結局何であったのか。何もなくなってしまい、昔を思って郷愁にひたっているほどのこともない。近いうち繁華性の高い店舗群ができる予定だから、機会があれば寄ってみようと思いつつ、さっぱりした気分になった。本来の目的の美観地区に街を見ながらブラブラと歩いた。

歩くとよく街が見えてくる。駅南方面が倉敷の一番賑やかな所であろうが、繁華性はもうひとつのような感がぬぐえない。

美観地区の大原美術館で絵等をみるのが本来のおもむいた目的であった。が、欲張って近くにある“大橋家住宅”も拝見した。国の重要文化財の指定を受けている。倉敷の町家の代表格。寛政8年( 1796 )から建築を始めた立派な町家の遺構である。私はこういう建物をみるのが好きなので、気持よく楽しい思いができた。ただ、いらぬ心配ながら古い家を守るのは大変だろうと思いながら大橋家を後にした。

すぐ近くにある美観地区へ。大原美術館創立 80 周年記念特別展「大原BEST」と大原孫三郎生誕 130 年記念特別展「大原孫三郎 日本美術への眼差し」を堪能した。国宝や重要文化財をはじめ、誰でもが知っている有名な西洋美術の絵(ピカソとかモネをはじめ多彩な作品)などを身近にみる事ができ、精神的な満足を得た。有隣荘、本館、分館、工芸・東洋館、児島虎次郎記念館など会場がわかれているため、歩くのも疲れた。

美観地区一帯は「倉敷市倉敷川畔重要伝統的建造物群保存地区」に選定されていて、白壁の倉を利用した店舗などが連担して街を形成している。タイムスリップしたような昔の繁栄をしのばせる特色ある地域。みやげ店等が軒を連ねている点うっとうしいところも感じるがいずれにせよ地域全体の景観は評価できる。常時、大原美術館で、世界レベルの美術工芸品等が鑑賞できることは、非日常的な別世界にひたることができるから、時々、訪ねるにはいいところだ。いい気分の一日でありました。

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